盛らばさらば!

「補助金は魔物である」とはよく言われる話です。
実際にこれまで多額の補助金が投入されながら最終的に経営破たんにまで至った事例を少なからず見てきました。

多くは、補助金も含めて多額の資金を投入して商品開発をしたが、その開発商品が市場で思うように売れなかったことによるものです。

その中のある商品のことがふっと頭に思い浮かびました。
「A商品が何故売れなかったのか?」

そのA商品について、開発した社長さんがその優れた機能について何度も説明してくれました。何故、何度も説明してくれたかというと、僕が何度も聞き返したからです。

何故、僕が何度も聞き返したか?というと、社長の説明を聞いてもどこが優れているのかが、スコーンと呑み込めなかったからです。もう聞けば聞くほど、分からなくなる感じ(笑)でした。

今思うと、ここに売れない本質があったのではないかと思います。
つまり一言でこの商品を買うメリットを伝えきれない。

何故一言でメリットを伝えきれなかったかというと、本来のB機能に加えて、C機能を加えて、さらにD機能までついている、つまり機能てんこ盛りにして、「どうだ、凄いだろう!」という内容だったのです。

そして多機能をつけたおかげで開発コストはかさみ、さらにランニングコストも大きく膨らむというおまけもついてきました。

そもそも人間の頭は同時に複数の情報を理解することができません。
1.「B機能が優れています」と言われれば、なるほどとその良さが素直に理解できます。
2.「B機能に加えて、C機能もあります」となると、混乱してきて、商品の理解が出来なくなってきます。
3.「B機能、C機能に加えて、D機能もあります」と言われると、ほとんど頭にはいらなくなり、理解するのが面倒になります。

商品設計の段階で、沢山の機能を盛れば、それだけお客さんは欲しがるはずだ、と考えた時点でこの商品は破綻していたのだと思います。

あれもできます、これもできます、と言った瞬間に商品には霞がかかり、良く分からないモノに姿を変える。

良く分からないモノは、良く分からないモノのまま、どんな優れた機能を持っていたとしても、現世を離れ黄泉の国を浮遊し続けるのです。