社長が儲けを独り占めしている?

僕がまだ20代の頃の話です。
レンタルレコードチェーン店のバイトから始まり、店長、管理職といった時代がありました。

毎月、各店長さんが集まって結果の数字を見ながら経営会議をやっていたのですが、どうも腑に落ちないというか、次第にストレスになっていたことがありました。

そのストレスとは貸借対照表を毎月見せられて説明されるのですが、いくら見てもその意味が分からない。穴のあくほどその数字を見るのですがいくら見ても理解できず、それが次第にちょっとした劣等感とストレスになっていった。

今思うと、説明している社長以外、出席している店長さんは間違いなく誰一人このBSの意味を理解していなかった。
当たり前と言えば当たり前、というのは売上、経費、利益と上から順に並んでいる損益計算書(PL)は誰が見ても感覚的に理解できる。一方、会社の財産の状況を表す貸借対照表(BS)は別建てて勉強しないとまず意味が分からない。
そして当時の会社は、そんな財務構造の教育を経営幹部(店長)に教え込むということもしなかった。

時代は流れ、実は現在でも多くの中小企業の実態は大して変わっていないというのがコンサル現場の実感です。
色々な会社の会議室で、昔の僕と同じように理解できないBSを見せられて店長さんが唸っている光景が繰り広げられているのです。

実はこれは会社としては決して健全な光景とは言えません。
この状態を放置すると、店長さんたちはこんなことを口々に言い始めます。
「俺たちこんなに頑張っているのに社長がもうけを独り占めしているんじゃないか・・」
事実、本当に店長が集まる酒の肴にこんなことが何時もささやかれていました。

何故、こんな疑念が生じるのでしょうか?
BSが経営幹部に理解されないと、現実にこういう状態が生じるのです。

その理由は明らかです。
BSが分からないと会社の本当の経営状況や将来の見通しが全く見えないからです。
損益計算書(PL)はその年度の経営成績(売上、経費、利益の結果)しか表現していません。会社はPLで出てくる情報以外に今、手元に現預金がいくらあるのか、借金がどれくらいあるのか、過去にどれだけの利益が蓄積されてきたのか、その結果財務的な余力がいくらあるのか?等々それらは貸借対照表(BS)を見ないと分からない数字なのです。

これらの会社の現在と将来を見据える上で極めて重要なBSの情報が意味も含めて、将来にわたって会社を作っていく経営幹部(店長)たちが理解していないというのは、将来性に期待が持てない会社であると言い切っても良いと思います。

強い人材、特に経営幹部を育てる上で、財務を数字的に理解させることは正に一丁目一番地ではないでしょうか?

肝心のことは社員に伝えないで、経営幹部が構造的に経営数字が見えてなければ、「社長だけが良い思いをしている」と陰ひなたで囁かれるレベルの低い会社のままでいることは間違いないでしょう。

人材育成というのであれば、まず幹部人材の財務教育が必須と店活(みせかつ)では定義しています。